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会員の活動紹介

会社人間から木工愛好家に

 現役時代は、仕事一筋。仕事、仕事で、他のことをやろうと考える気も起らなかった。そんな人もエプソンOBには多いのではないかと思います。今回インタビューさせていただいた中山さんも、そんな「会社人間」の一人だったそうです。そんな中山さんが、どの様に「木工愛好家」になっていったのか、伊那の自宅で話を聞かせていただきました。

<プロフィール>

 中山さんは1970年(昭和45年)に松島工業に入社し、水晶振動子製造に携わりました。後進の育成指導、基準化、合理化などを中心に生産技術、開発技術を担当し、変化に対応出来る生産方式や製造技術改善に努めてきました。
その後定年までの21年間はISO推進事務局業務とNESP事務局として基準作成や国内外の教育指導・監査に従事し奮闘する中、定年を迎えました。

― 退職後、今まで全く縁のなかった木工をしようと思った切っ掛けを教えてください ―

 会社生活時代の趣味と言えば習字とボウリング・ソフトボールなどで木工とは無縁でした。定年退職を迎えた2~3年程前にたまたま入手した3m程の欅板を自己流に加工しテーブルを作成しました。そのテーブルを見た知人から「同じようなテーブルを作ってくれないか」という作成依頼があり、その後も見聞きした人から更に依頼があり、知らぬ間に木の加工にはまっていました。
またテーブルの様な大物だけでなく、小物ではペン立ても手始めに手掛けた作品です。これは玄関先や机に、筆記用具を置けるものがあれば整理され綺麗で格好いいだろうと考え作成が始まりました。

試行錯誤して作ったテーブル

― 木工に引かれた理由、また木工の魅力は何だと考えますかー

 木の持つ温もりです。磨き上げた木肌はつるつるで温かみを感じます。
また、木によって香り、色、木目、硬さが様々でアイデア次第で色々な物に形を変えて行きます。
更に同じ木でも部位により様々な表情があり、加工角度や磨き具合で風合いが変化していくところです。
端材で捨てられそうな木片も加工次第で唯一無二の作品と生まれ変わります。この様に入手した木を何に加工しようか考える時が一番楽しく、木工の魅力だと思います。

― 木工をする中で、苦労した所はありますか ―

 今は自宅裏の軒下作業場で作業をしていますが、始めたころは作業場も工具も全く無い中でスタートしました。少しずつ工具を買い求め、作業は家の裏の畑に一輪車で板を運び、夕方になれば持ち帰り軒下に保管する、そんな繰り返しでした。
欅などはとても固く、加工するのが大変で、丸鋸も無理をするとモーターが焼け、表面を研磨するサンダーも何台も破損させてしまいました。表面研磨はサンダーを使い50#~600#と何段階もサンドペーパーの粗さを変えて磨くのですが、1枚の板を仕上げるまでには何十枚ものペーパーが必要になります。
木目の美しい古木は石のように固くねじ止め用の下穴加工も、ドリルの刃が途中で折れたり欠けたりなど悪戦苦闘の毎日でした。
こんな苦労だらけですが、手加工の良い面も沢山あります。高精度な加工機が無いので簡単にできる切断や平面出しも、殆ど手作業と目視で行わなければならないのですが、それが手作業ならではの趣の有る作品に仕上がると思っています。もう少し思い描く形にしようと加工を加えた時に削りすぎたり、割れたりしてショックを受けることもありますが、夢中になって加工し仕上がった作品を眺める時は苦労の分だけ喜びを感じます。

完成品の棚と作品
地区の文化祭出展

― 中山さんは区の様々な役員を務め現在も地区社協の会長として活躍するなど、地域の皆さんとの交流を深めていると聞きますが、木工を通しての地域との関わりはありますかー

 毎年の地区文化祭には昔は書道作品だけの出品でしたが、最近は自分の書や妻の切り絵作品を自作の額に収め、ペン立て、花台、花さしなど作風を少しずつ変えて出展し区民の皆様に鑑賞していただいています。また地域の子供達や、絵手紙同好会の皆様には竹筆つくりを指導、積み木細工でクリスマスツリー作りを教え、木工の技術を活かして子供みこし(樽神輿)の製作などに協力し地域の皆さんとは深く関わり交流しています。

― 定年後始めた木工ですが、初めて良かったと思う事を教えてください ―

 一番の思い出は、かんてんパパホールでの個展を開催できたことです。(2023年11月2~7日に開催)
画家のMさん(40年来の”ご近所さん”家族ぐるみの付き合いのある方)と共同で個展を開催し、定年後から作りためた約300点を展示し販売もしました。

個展会場でご近所のMさんと2ショット

1,000人以上の人にご来場いただき、自分の思い描いた作品を見ていただいた方に共感していただけた時は、木工を初めて良かったと本当に嬉しくなりました。
更に、この個展でお買い上げいただいた方から、家に飾った様子がメールで届き、それを見た時には本当に感動しました。
また、それ以外にも社友会の旅行で賞品として受け取っていただいた方から会うたびに感謝の言葉を頂けたり、作品を気に入っていただき友達にも贈りたいと言って何度も家を訪ねてくれる方もいらっしゃいます。
余談ですが、家の中もDIYにより色々な改善を施しており、妻にも喜ばれています。

― 今後どのような作品を作りたいですか ―

 10年程前からは少しずつ手掛けた破材や板材を切断加工し、花台、筆置き、携帯スタンド、コースター、一輪さし、など小物つくりを中心に木工を行ってきました。
(ペン立ては机の上、玄関の棚などに筆記具を品良く置きたいという気持ちから作成)
(額は、自分の書や妻の切り絵の作品を入れるために作成)
今後は入手した板材がまだあるので木とにらめっこをしながら、見て美しい、触れて温かみを感じる、実用性の有る作品を楽しみながら作って行こうと思います。

<取材を通して感じた事>

 完全「会社人間」だった中山さんがそれまでやっていた習字・卓球・ボッチャなどに加え、定年後の新たな趣味の木工を通じて地域の皆さんとの交流を深め、多くの皆さんから慕われている現在にどの様に至ったのか、インタビューを通して垣間見ることが出来ました。「会社人間」「仕事人間」から抜け出したいと思っている方には、大いに参考になるお話をお聞きできたと思います。

話は変わり私事(=インタビューアー大槻)になりますが、私の祖父が桶を造る職人だった事も有り子供のころから木や竹が身近に有りました。中山さんの作業場を見せて頂き、一心不乱に作業に取り組む姿を目の当たりにした時に、祖父の作業場とは異なりますがその情景が重なり、何処か懐かしく感じとても癒される空間でした。中山さんが作成した数々の作品の中に「あ・・・これほしいな」と思える作品が幾つも有り何時かまた、工房に伺いたいと思いました。
取材当日に中山さんに作っていただいた鉛筆立てとても重宝しています。
有難うございました。

(取材HP委員:井駒敦志・大槻清子)

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